2010年01月28日
総合サイトのPV規模縮小が続く
IT系総合サイトといえば、代表格は「ITpro」と「ITmedia + @IT」。
IT系雑誌が次々と斃れ、死屍累々の様相を呈する中で、リソースを投入し、扱いジャンルの拡大を重ねて、サイト規模の拡大・増殖を続けてきた憎いヤツだ......。
が、しかし、この半年余りで様子が変わってきている。
※以下で引用している数字は、それぞれBP社とアイティメディア社の発表数値
2000年にスタートした「ITpro(スタート当時は「IT Pro」2000/08/28:日経BP社「IT Pro」詳報)」は、2008年7月に月間PV数「22,035,208PV」を記録(同月の月間UBは「2,973,240UB」)、2009年6月に月間ユニークブラウザ数「3,224,296UB」を記録した(同月の月間PVは「20,777,758PV」)。これが月間PV数、月間UB数のピークだった。
PV数は緩やかに減衰するも、PV・量からUB・質への転換を標榜し「PV」=「Page Value」とか言いながら、UB数は維持して「月間2000万PV」「月間300万UB」の線を長らく維持してきたが、昨年2009年7月(月間PV「18,956,687PV」、月間UB「2,803,506UB」)以降は月間PV数の急激な減少が続き、2009年12月には、遂に「14,812,834PV」と「1500万PV」を割り込んだ(UB数も「2,877,195UB」まで減少)。
一方の「ITmedia」「@IT」も「ITmedia Topページ」と「ITmedia News」の合計ページは、2009年6月の「20,220,363PV」から、2009年12月には「16,143,574PV」と減少し、同じく合計UU数も「4,164,916UU」から「3,716,128UU」に減少。
よりテクニカルで専門性の高い「@IT」では、2009年6月の「17,604,426PV」⇒2009年9月は「14,528,820PV」⇒2009年12月は「14,693,088PV」と推移しているが減少幅は季節的要因も加味すれば小さい。
UU数も、2009年6月「2,718,870UU」⇒2009年9月「2,454,906UU」⇒2009年12月「2,654,006UU」と安定している。
※@ITの数値には「情報マネジメント」「MONOist」「JOB@IT」などは含まず
※発表資料に抜けている2009年6月の「@IT」数値は別途提供を受けた
以下は個人的な分析など。 (^-^;
「ITpro」の場合、「Tech-On!」や「PC online」等も、かなりPV数を減らしているので、BP社全体でのコストカットによる意図的な記事本数の削減が影響している面もあると考えられるが( ITmediaも一般社員の給与までカットして費用圧縮に必死ですが)、総合サイトのPV減少・退潮現象の根本は「広い範囲の情報を扱う総合サイト」の「トップページ」からWebサイトを巡回してチマチマと情報収集する行為が、もはや大多数の人にとって時代遅れになった事でしょう。
総合サイトよりは間口が狭く専門性の高い各種「専門サイト」は、狭い範囲に区切られているので閲覧時の情報検索性の低下もそれほどではなく、同じジャンルに興味を持つ者のコミュニティとしての存在価値も保持しているため、Webサイトを定期的に、かつ、一日数回訪問するという昔ながら形態も依然として残っていると考えられます。
「なんでもある大手百貨店の不振」と「特化型専門店の現状維持or微妙に伸張」という感じでしょうか?どこにでもあるモノなら、百貨店で買わないですもんね。
優れたWeb検索技術により、必要な情報へダイレクトにアクセスできるようになりました。トップページなんか、どうでもいいですね。メディア・ブランドにも、さしたる意味は無いですね。見つけた情報が必ずしも大手メディアのWebサイトに載っている情報でなくても、内容が信じるに足る物かの判断材料となる情報発信者のプロフィールなどは、これまた検索すれば、すぐに判りますし、Twitterでの見知ったフォロワーによるRTで引用があれば、一定の信頼がおける情報と判断することもできましょう。もはや、メディア企業の運営するWebサイトのみが情報取得の場でないのは判りきった事ですね。
Webサイト規模の拡大・増殖によって広告販売可能なPV在庫を増やし、営業守備範囲も拡げて広告収益をガンガン上げる戦略は、人的・物的リソースを投入し続けないとパタリと転倒する自転車操業のような物でしたが、ここ数年の不況によって、事実上、頓挫しました。
だからこそ、サイト規模の縮小にも多少は目を瞑ってきた訳ですが、今をときめく「読者プロファイル」を切り売りして儲ける「リード・ジェネレーション商法」も、Webセミナーやバーチャル・イベントなどの亜種・変種を投入・駆使しても限界があるでしょう。
しかし、危急存亡の時期に親会社・日経新聞のWeb/電子新聞事業の為にBP社でWebサイト運営を担ってきた人材を供出するのは......なんか違うんじゃないかね?
扱いカテゴリーを欲張り過ぎない適正規模の安定したWebサイト運営、Webサイトの実情にあったこまめな料金改訂(値下げも当然)と公正な料金適用、インディペンデントな専門Webサイトが商業ベースに乗り易い環境作り(記事提携や営業面での協力等)、そして、何よりも読者の事を第一に考える姿勢で業界全体として取り組んで行かないといけませんね。